4120細谷建治児童文学論集 Ⅱ
てらいんくの評論
細谷建治児童文学論集 Ⅱ
町かどをまがるとゴジラがいる
細谷建治:著
A5判 452ページ 上製
定価:5,000円+税
ISBN978-4-86261-147-5
発行:2019年07月
内容
児童文学批評を通じて「子ども」と「文学」の関係を問い続けてきた著者の、50年に渡り発表してきた論文をまとめた待望の論集全3巻。
第2巻では、宮澤賢治「雪渡り」、巌谷小波「小波お伽噺」などの近代の作品に加えて、新冬二『すてきなすてきなキー子』、小沢正『砂のあした』、砂田弘『東京のサンタクロース』、斎藤隆介「ベロ出しチョンマ」、今江祥智『山のむこうは青い海だった』、上野瞭『ちょんまげ手まり歌』、古田足日『宿題ひきうけ株式会社』、佐野美津男『にいちゃん根性』、山中恒『ぼくがぼくであること』などの1960年代の作品を詳論。また、1980年代の飯田栄彦『昔、そこに森があった』、岡田淳『扉のむこうの物語』、新冬二『今夜はパーティー』、日比茂樹『東京どまん中セピア色』、那須正幹『ぼくらは海へ』などを取り上げて評論。ほかに、岡田淳、日比茂樹、新冬二、伊沢由美子らの作家論を収載。
目次
【Ⅰ】
町かどをまがるとゴジラがいる―「雪渡り」と『E.T.』の奇妙な関係について。あるいは「雪わたり」の読みに関するいくつかの雑感―
むかし、そこに木があった―『昔、そこに森があった』論。あるいは木のイメージに関するいくつかの雑感について―
雲は流れる、迷路はめぐる
子どもたちは都市の暗がりの中で犯罪に憧れている―児童文学に描かれた都市のイメージに関するいくつかの雑感について―
ある日、ぼくらは笑いの渦の中をひた走る
なぜ遠山の金さんは桜吹雪を見せるのか
なぜ人は山のむこうに幸せを求めたがるのか―「なぜ遠山の金さんは桜吹雪を見せるのか」の補遺・戦後編―
【Ⅱ】
ぼくらは、どこへ―『宿題ひきうけ株式会社』論ノート―
ふたたび、ぼくらは、どこへ―問題の整理、あるいは舟のイメージについて―
ぼくは、どこへ―児童文学における家出の構図―
ふたたび、ぼくは、どこへ―児童文学における家出の構図2―
海のイメージ
異質のイメージ。あるいは誤読への誘い
【Ⅲ】
日常の中の異形。あるいは岡田淳論
《苦》と《楽》のアイデンティティ。あるいは日比茂樹論
イメージの手品師―新冬二論―
風―伊沢由美子小論―
著者による覚書
解説/批評の季節に 宮川健郎
解説より抜粋
たとえば、「町かどをまがるとゴジラがいる」の主題は何か。「ぼくは「雪わたり」をひとつのイニシエーションの物語だと考えている。」―これが主題か。もし、そうだとしても、語り手は、もっともっと多くのことを語る。これが、細谷の批評のおもしろさ、楽しさだし、豊かさだといえるだろう。そして、その豊かさは、細谷の批評を、「雪渡り」なら「雪渡り」の単なる作品論にとどめないで、テーマ批評にしてしまう。児童文学における「木」のイメージ、「迷路」、「都市」、「笑い」といったテーマをめぐる批評に広がっていくのだ。(宮川健郎・児童文学評論家)
著者プロフィール
細谷 建治(ほそや けんじ)
1946年群馬県生まれ。群馬大学教育学部卒業後、東京都江戸川区の小学校に、40年ほど勤め退職、現在に至る。
日本児童文学者協会会員。日本児童文学学会会員、児童文学評論研究会会員。個人誌『童話ノート』を刊行。
「どろぼうたぬき」で第一回船橋市文学賞、児童文学部門文学賞受賞。
編著に『資料戦後児童文学論集全三巻』(偕成社)。
共著に『国語教科書攻撃と児童文学』(青木書店)、『現代児童文学の可能性』(研究=日本の児童文学4、東京書籍)、『児童文学批評・事始め』(てらいんく)。